雪国の人も恐れるアイスバーンとは?やってはいけない運転や注意すべき場所
冬になると「アイスバーン」という言葉を聞く機会が増えます。「道路がアイスバーンになっているから気をつけて!」と注意喚起されたり、『アイスバーンに強いタイヤ』というキャッチコピーを聞いたりしたことがある人も多いかもしれません。
さてアイスバーンとは、どのような路面状態なのでしょうか?
この記事ではアイスバーンについて、発生するメカニズムや注意が必要な理由を解説します。アイスバーンの路面を走る際に気をつけるべきポイントや、万一スリップしてしまったときの対処法までまとめました。
ぜひ最後まで読み、冬のドライブを安心して楽しむヒントにしてください。
目次
冬になると耳にする「アイスバーン」とは
まず、アイスバーンとはどのような状態か解説します。ただ雪が積もっただけの状態とは異なり「凍結し、ツルツルになっている」点がアイスバーンの特徴です。
アイスバーンとは路面が凍結してツルツルになった状態
「アイスバーン」は、ドイツ語由来の言葉です。
- アイス:氷
- バーン:道路
降雨後の冷え込みや雪解け水、圧雪などで路面がツルツルに凍りついた状態を指します。
実は、雪が降っても「雪が積もっているだけの状態」のときはさほどは滑りません。雪が滑るのは、雪の上に薄い水の膜が張ったときです。
薄い水の膜は、人や車の往来で発生する摩擦熱により雪が溶けて発生します。
アイスバーンは、この水の膜がさらにツルツル・カチカチに凍りついた状態です。
アイスバーンは路面が「溶けて凍る」を繰り返してできる
アイスバーンは、容易には割れないほどカチカチに凍りついています。「溶ける⇒凍る」を何度も繰り返すうちに、どんどん氷が固まっていくためです。
日の当たらない幹線道路を想像してください。
雪が降り、路面が白くなりました。車の往来による摩擦熱、あるいは日中の気温上昇で雪が溶けだします。しかし日が当たらないので完全には溶け切らず、夜間の冷え込みでまた凍ります。
そのあいだも車が行き交うため、路面の雪・氷はどんどん踏み固められます。
この繰り返しにより、アイスバーンはカチカチ・ツルツルになっていくのです。
アイスバーンは気温が0度以上でも発生する
水は0度で凍りはじめます。しかしアイスバーンは気温0度以上のときも発生するため「今日は5度まで上がるから、路面も溶けるだろう」と高をくくってはいけません。
気温が5度のとき、路面温度は雪や夜間に冷やされた影響で5度以下になっています。状況によってはマイナスの路面温度になる場合もあり、アイスバーンが発生します。
気温に関わらず、冬場は常にアイスバーンに注意するようにしましょう。アイスバーンがとくにできやすい場所を後ほど紹介します。あわせてご覧ください。
つまり、降雨時でも冷え込みによってはアイスバーンになる
ここまで、以下のようなアイスバーンのメカニズムを解説してきました。
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つまり「雪が降らなくても」「気温がマイナスにならなくても」アイスバーンができる可能性はあるということです。
冬の雨にはとくに注意しましょう。
路面に溜まった水分が夜のあいだに冷やされ、凍りついてアイスバーンになる場合があります。
アイスバーンの運転はとくに注意が必要!その理由
アイスバーンになった道路は、雪道の運転に慣れている積雪地域の人でも嫌がるほど怖い場所です。
アイスバーンでスリップすると車のコントロールが効かなくなります。ブレーキを踏んでもタイヤはキュルキュル空回りするばかりで、ハンドルを切ってもまったく車は動いてくれません。
アイスバーンで滑ると、停まるまでドライバーは無力です。自然停車すればラッキーですが、最悪の場合はガードレールや対向車との衝突も引き起こします。
アイスバーンの道路は「雪国の人も恐れるほど」の怖さと心得、慎重な運転を心がけましょう。
アイスバーンの種類と注意点
アイスバーンは、作られ方によって3つの種類に分けられます。それぞれの特徴と注意点を解説します。
圧雪アイスバーン
圧雪アイスバーンとは、名前のとおり「雪が踏み固められ、圧縮された状態」の路面をいいます。
雪だけの状態のときは比較的滑りにくいのですが、表面の雪が溶けだすと一気に滑りやすくなります。
アイスバーンのなかではもっとも、スタッドレスタイヤのグリップ力が発揮される路面です。
圧雪アイスバーンが気温上昇や摩擦熱で溶け、また凍るのを繰り返すと次に解説する「ブラックアイスバーン」に変化します。
ブラックアイスバーン
ブラックアイスバーンとは路面が薄い氷で覆われた状態です。
路面に水分が溜まり、気温が下がると発生します。降雨後の冷え込みでもできるため「雪が降っていないから」と安心はできません。
ブラックアイスバーンは非常に滑りやすい状態です。とりわけ夜間は、濡れているだけの状態との見極めが難しいため、うっかり進入しスリップしてしまう事故も多数発生しています。
冬場に乾燥した路面以外を走る際は、十分に速度を落とし慎重な走行を心がけましょう。
ミラーバーン
ミラーバーンは、表面が鏡のように磨き上げられた路面です。
非常に滑りやすい反面、光を反射しやすく事前に気づきにくいという特徴があります。
ミラーバーンはスタッドレスタイヤを装着した車が、頻繁に往来する場所で発生しやすいといわれます。
スタッドレスタイヤは積雪・凍結した路面をグリップするため、独特の溝を使って路面の水分や雪をタイヤの外に排出しています。この機能のおかげで滑りにくく走行できるのですが、一方でスタッドレスタイヤが走れば走るほど雪は水分を失い踏み固められやすくなります。
その結果、路面が磨かれミラーバーンになるのです。
ミラーバーンは交通量の多い場所で起きやすいため、都市部の交差点やバイパスなどではとくに注意しましょう。
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アイスバーンが起きやすい場所4つ
アイスバーンは路面が凍りやすい場所で発生します。とくに起きやすい場所を4つ解説します。この4つの場所を走る際は、路面状態によく気を配りましょう。
橋の上
橋や高架の上は、もっともアイスバーンが起きやすい場所です。以下の3つの条件により、路面が凍りやすいためです。
- 地熱で温められることがない
- 冷たい風が吹きつけやすい
- 吹きさらしになりやすい
橋の手前や向こう側の道路は凍っていないのに、橋の上だけがアイスバーンになっているケースもあります。橋の手前と同じ感覚で進入すると、思わぬスリップ事故につながりかねません。
交差点
車の往来が多い交差点は、圧雪アイスバーンやミラーバーンになりやすい場所です。交差点でスリップすると対向車との衝突事故や前方の車への追突事故につながります。
交差点に近づいたら早めに減速し、車間距離を十分とって停車するようにしましょう。
またアイスバーンの上で停車した際は、発車時にタイヤが空回りしないよう気をつけてください。アイスバーンの上では一度空回りすると、なかなか抜け出せません。
急発進を避け、クリープ現象も利用しながらゆっくり進みましょう。
◎ クリープ現象 シフトをDに入れブレーキを緩めると、アクセルを踏まなくても自然とクルマが進むAT車特有の現象。 |
トンネルの出入口
トンネルの出入口は、山から吹き下ろす強い風が吹きつけます。路面が冷やされ凍ってアイスバーンになっている場合があります。
山影になる場所ではさらに雪や氷が溶けにくく、滑りやすくなっている場所もあります。
とくにトンネルの出口は注意しましょう。路面が乾いているトンネル内部でスピードを上げ、そのスピードのままトンネルを出たらアイスバーン!という危険性が考えられます。
日が当たらない場所
日が当たらない場所は、雪や氷が溶けきるまでに時間がかかります。表面が少し溶けてはまた凍るのを繰り返しやすく、アイスバーンになりやすい場所です。
また一度アイスバーンになってしまうと、アイスバーンが解消されるまでにも時間がかかります。
周囲はすっかり乾いているのに、日影だけいつまでも凍っているケースもあります。家屋やビルで太陽光が遮られる場所などは、よく注意しましょう。
アイスバーンになった道路を走る際の心がけ
都市部でもアイスバーンは発生するため、アイスバーンはすべてのドライバーが気をつけるべき危険です。
アイスバーンの上を走る際の注意点を6つ、解説します。
冬用のタイヤ装備をして走行する
大前提として、冬の道路を走る際は冬用のタイヤ装備をしましょう。
スタッドレスタイヤは、ゴムの素材や溝の入り方により夏タイヤより滑りにくい工夫がされています。
最低気温がマイナスになることも多い関東以北の地域を走行する機会が多い人は、11~12月にはスタッドレスタイヤに履き替えましょう。
タイヤを履き替えない場合は、タイヤチェーンを装備しましょう。タイヤチェーンには金属製と非金属性(ゴム製、特殊繊維製など)があります。
タイヤチェーンを用意したら、自分で脱着できるよう練習しておくと安心です。
可能なら4WD車を選ぶ
レンタカーでウィンターレジャーに行く場合など、乗る車を選べるシーンでは「4WD」がおすすめです。
4WDとは四輪駆動車(Four-Wheel Drive)のことで、4本のタイヤすべてに駆動力が配分されています。
4WDは前輪駆動(前方の2本のみ駆動)に比べ、タイヤへの馬力配分が高効率です。4本のタイヤそれぞれが力強く路面をつかむため、雪道や凍結路でも滑りにくいといわれます。
ただし4WDは絶対に滑らないわけではありません。雪道への安心度は高まりますが、慎重な運転を心がけてください。
スピードは絶対に出さない
アイスバーンになった道路では、絶対にスピードを出してはいけません。
アイスバーンの上ではブレーキが驚くほど利きにくくなります。「赤信号になった」「前方の車が減速した」など、ブレーキが必要な場面で停車できない恐れがあります。
急ハンドル・急ブレーキは厳禁
急ハンドルや急ブレーキなど、急な動きはタイヤが路面をグリップする力を一時的に失わせます。車が一気に滑りやすくなり、その場で横回転してしまうケースもあります。
アイスバーンを含む雪道では、以下の「急」がつく運転は厳禁だと心得ましょう。
- 急発進
- 急加速
- 急ハンドル
- 急ブレーキ
ポンピングブレーキを利用する
アイスバーンの走行では、ポンピングブレーキが有効です。
ポンピングブレーキとはフットブレーキを踏み、滑り始めたら少し緩め再び踏み込むという動作を繰り返す技術です。
断続的にブレーキが利くため、アイスバーンでも適度なスピードやスムーズな走行を可能にします。
滑る路面で強くブレーキを踏むと、タイヤが回転しなくなりブレーキロックがかかるケースがあります。ブレーキロックがかかると「制動距離が延びる」「ハンドルが利かなくなる」などの危険があります。
車間距離を十分に空ける
アイスバーンや雪道を走る際は、十分すぎるほどの車間距離を保つようにしましょう。
車間距離が空いていれば、自分や前方の車がスリップした際も大事故につながるおそれが少なくなります。
車は速度が上がるほど、停車までに必要な距離は長くなります。アイスバーンではそもそもスピードを出さないこと、さらに車間距離を十分とることを意識してください。
万一のために!アイスバーンで滑ってしまったときの対処法
どれだけ気をつけていても、危険は突然やってきます。
アイスバーンになった路面で万一、滑ってしまったらどうすればリスクを最小にできるのでしょうか。
2つのポイントを解説します。
焦ってハンドルやペダル操作で立て直そうとしない
アイスバーンの走行中「滑った!」とドキッとしたら、やってはいけないのは次の2点です。
× アクセルやブレーキを急に踏む
× ハンドルを急に切る
気持ちが焦ると、ついハンドルを逆に切って進む方向を立て直そうとしたり、ブレーキをかけて停まろうとしたりしてしまいますが、いずれもNG対応です。
スリップしているあいだ、タイヤは本来持っているグリップ性能を失っています。この状態では、いくらハンドルやペダルを操作しても車は反応しません。
焦らず、タイヤのグリップ力を回復させる点だけに集中した対処法を取ることが大切です。
ポンピングブレーキをかけながら走行車線を維持する
アイスバーンで滑ってしまったら、ポンピングブレーキを利用しながら走行車線を維持してください。対向車線にはみ出すと対向車と正面衝突事故を起こす危険があるため、走行車線の維持がマストです。
ポンピングブレーキを使うと、車が徐々に減速します。いずれアイスバーンは終わりタイヤのグリップ力は回復しますから、その地点まで持ちこたえるよう頑張りましょう。
アイスバーンに強いタイヤならタイヤ専門店へ
アイスバーンは、冷え込む地域ならどこでも起こりえます。走っていて急に出くわすケースも多いため、スタッドレスタイヤを履いておくと安心度が高まります。
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まとめ
アイスバーンは、路面の水分がカチカチ・ツルツルに凍りついた状態です。積雪後の路面だけでなく降雨後や日影などでも起き、いつどこでできてもおかしくありません。
橋の上や交差点、トンネルの出入り口はとくにアイスバーンになりやすい場所です。冬の走行時は十分注意しましょう。
アイスバーンでのスリップを防ぐ運転のコツは「『急』がつく運転はしない」に尽きます。いつも以上にゆっくりと慎重な運転を心がけましょう。
車の冬装備を完了させておくことも大切です。スタッドレスタイヤやタイヤチェーンなど、滑りにくくする準備をし、安心してウィンターレジャーに出掛けましょう。
現在、一級自動車整備士(整備士歴10年)として整備工場に勤務。専門学校卒業後、輸入車ディーラーに整備士として勤務、6年間で3社を経験。その他、「国家二級ガソリン自動車整備士」「国家二級ディーゼル自動車整備士」「アーク溶接」「低圧電気取扱者」の資格を保有。