タイヤのスリップサインとは?見方や仕組み、タイヤの寿命のチェック方法を詳しく解説

スリップサインはタイヤのコンディションや寿命を測る、大切な印です。整備士も、点検時はかならずスリップサインをチェックします。では、スリップサインとはどのようなマークでしょうか。また、どこを見れば確認できるのでしょうか。

愛車の点検・メンテナンスはプロに任せている方も、タイヤの寿命を示すスリップサインに関しては、正しく知っておくことが重要です。

今回は、スリップサインの見方を中心に、溝の役割や摩耗が進んだタイヤのリスク、日常点検の方法まで詳しく解説します。初めての方向けに、わかりやすくまとめました。安全に、安心してカーライフを楽しむために、ぜひ最後までご覧ください。

 

スリップサインとは?

はじめに、スリップサインとは何を示すサインなのか、位置や基本的な見方と合わせて解説します。

スリップサインの役割

スリップサインは、タイヤの摩耗が進み、寿命を迎えたことを教えるサインです。タイヤはゴムでできており、走行とともに摩耗します。摩耗するとタイヤの溝が浅くなり、やがて表面がツルツルになってしまいます。

車が安全に走行するためには、タイヤの溝が「必要十分に」残っていることが重要です。残溝が必要十分である、その限界を教えるマークがスリップサインだと理解しましょう。

スリップサインの位置

スリップサインの位置は、タイヤの側面を見るとわかります。

タイヤの側面には、画像のような三角マークが数か所、刻印されています。トレッド面(溝がある接地面)に向いた頂点の延長線上、溝の内側にスリップサインがあります。

スリップサインはタイヤが摩耗し、溝が浅くなると露出する仕組みです。新品のタイヤや走行距離が短いタイヤでは、見えにくいかもしれません。

タイヤが擦り減り、トレッド面とスリップサインが同じ高さになると、両側をつなぐ橋のような形状でスリップサインがあらわれます。

スリップサインは、タイヤを車体から外さなくても確認できます。タイヤに刻印された三角マークを目印に、探してみてください。

スリップサインの見方の基本

スリップサインは、溝の残りが1.6mmになったことを示します。タイヤの溝は1.6mm以上必要であると定められており、スリップサインが露出したタイヤは、速やかに交換しなければなりません。

1本のタイヤには、スリップサインが数か所、設けられています。このうち1か所でも露出すると、そのタイヤは「寿命である」と判断されます。

ただし、あくまでスリップサインは「法が定義するタイヤの寿命」です。どのような路面も安全に走るには残溝1.6mmではやや不安、というのがタイヤメーカーや整備工場の本音。残溝が3mm程度になると、タイヤ交換が推奨されます。

【注意】スタッドレスタイヤのスリップサイン

先に解説したスリップサインの見方は、すべてのタイヤに共通です。夏タイヤの寿命は、スリップサインで判断されます。

注意したいのは、スタッドレスタイヤにはスリップサイン以外に寿命を示すサインがある点です。スタッドレスタイヤ特有のプラットホームを解説します。

スタッドレスタイヤ固有の事情

スタッドレスタイヤには、夏タイヤよりシビアなコンディションでも安全に走行できる性能を求められます。雪や氷にも負けず、路面をガッチリとグリップするために、やわらかな素材や独自のトレッドを備えています。

ここで、少し考えてみましょう。

スリップサインが露出する残溝は、1.6mmです。1.6mmの溝で、雪や氷の上を安全に走れるでしょうか。

答えは「NO」です。

残溝1.6mmのタイヤは、ツルツルといって良いほど、溝がほとんど残っていません。雪や氷の上ではスリップしてしまい、まともに走れないでしょう。

スタッドレスタイヤに備わった「プラットホーム」

スタッドレスタイヤが冬の路面でも安全に走れる限界のサインは、スリップサインとは別に設けられています。名前を「プラットホーム」といいます。

プラットホームは、新品のスタッドレスタイヤが50%摩耗するとあらわれるようになっています。スリップサインよりも早い段階で露出する、ということです。

露出する順番は「プラットホーム→スリップサイン」

スリップサインでは、まずプラットホームが露出します。プラットホームがあらわれたタイヤは、スタッドレスタイヤとしては寿命を迎えています。

冬のあいだにプラットホームが露出したら、速やかに交換しましょう。プラットホームが露出したタイヤも、スリップサインが出るまでは夏タイヤとして使用して構いません。

夏になってもスタッドレスタイヤを履いたままの車を見かけるのは、これが理由です。プラットホームが出たタイヤを、夏のあいだに履きつぶそう、という意図があるのでしょう。

ただし、スタッドレスタイヤは夏の熱い路面向きには作られていません。ゴムがやわらかすぎてハンドル操作に影響したり、パンクやバーストのリスクも高まります。

「プラットホームが出たスタッドレスタイヤを夏に履いても構わないが、推奨はされていない」と理解してください。

スリップサインが出たタイヤのリスク

スリップサインが出たタイヤには、多くのリスクがあります。ドライバーなら知っておきたいリスクを、3つ解説します。

ウェット路面で滑りやすくなる

タイヤの溝は、路面とタイヤの間に入った水を排出する役目を果たしています。溝が少なくなったタイヤは排水効率が落ち、スリップのリスクが高まります。

「ハイドロプレーニング現象」という言葉を聞いたことがある人も、多いでしょう。タイヤのトレッド面と路面の間に水の膜ができ、車体が浮いた状態になる現象です。ハイドロプレーニング現象になるとハンドルもブレーキも利かなくなり、大変危険です。

交通違反となり違反点数・罰金が科される

スリップサインが出たタイヤは、道路交通法の「整備不良」に該当します。スリップサインが出たタイヤでの走行には、違反点数と罰金が科されます。

<違反点数>

  • 普通車・大型車とも2点

<罰金>

  • 普通車:9,000円
  • 大型車:12,000円

車検を通過できない

スリップサインが出たタイヤを履いた車は、車検を通過できません。道路運送車両の保安基準・第9条第2項にて、残溝1.6mm未満のタイヤは違反であり、公道を走行できないと定められているためです。

車検でスリップサインが見つかると、車検を通過するために新品タイヤへの交換を案内されます。

部位別に見る摩耗の主要因

タイヤのスリップサインは、摩耗によって露出します。バランス良く走行しているタイヤは、全体が均等に摩耗します。

ところが、さまざまな要因で摩耗の箇所が変わるケースも見られます。タイヤが摩耗しやすい位置と、その要因を見てみましょう。

タイヤの端が摩耗する(ショルダー摩耗)

タイヤの端部分(サイドウォールにつながる肩の部分)が摩耗しやすいタイヤは、空気圧が足りていません。空気圧が足りないとタイヤが常に圧迫された状態になり、トレッド面はもちろん、ショルダー部分への圧力が過大になります。

その結果、ショルダー部分の偏摩耗が起こります。適正な空気圧を維持できているか、定期的なチェックをおすすめします。空気圧のチェックはガソリンスタンドで簡単にできます。

後ほど詳しく解説しますので、続きをご覧ください。

タイヤの中央部分が摩耗する(センター摩耗)

トレッドの中央付近の摩耗が進むのは、空気圧が高すぎることが要因です。空気を入れすぎるとタイヤの中央付近が盛り上がります。

その結果、本来ならタイヤ全体で車体を支えるところを、中央付近のみが接地するようになり、摩耗が進むという仕組みです。中央部分が摩耗しやすい場合も、タイヤの空気圧を適正に保てるよう、定期的にチェックしましょう。

タイヤの片側だけが摩耗する(片側摩耗)

タイヤの片側ばかりが摩耗するのは、走行のバランスが取れていないことが要因です。重い荷物を片側だけに乗せている場合などに起こります。

また、走行時の振動によってタイヤの重心にズレが起きている可能性もあります。タイヤのズレは、バランス調整という工程で修正できます。繊細な調整が必要になるため、タイヤ専門店や整備工場に相談しましょう。

タイヤの摩耗を遅らせるコツ

タイヤ価格も値上がりが続き、車の維持費に悩まされる声も多い近年。「スリップサインの露出を少しでも遅らせたい」「タイヤを長持ちさせたい」と考えるのは、自然な心理です。

最後に、タイヤの摩耗を遅らせる3つのコツを紹介します。すぐにできるコツから、取り入れてはいかがでしょうか。

「急」がつく運転はしない

「急」がつく運転とは、次の4つを指します。

  • 急発進
  • 急ブレーキ
  • 急加速
  • 急ハンドル

危険があり、やってはいけない運転として、教習所で教わる内容です。実は、この「急」がつく運転は、タイヤにも負担をかけます。タイヤに負担がかかると摩耗が進み、スリップサインの露出を早めます。

安全のため、そしてタイヤを長持ちさせるために、「急」がつく運転はしないようにしましょう。

タイヤの保管環境に気を配る

タイヤは、紫外線やオゾン、風雨によって劣化します。劣化が進んだタイヤは硬くなり、性能を発揮できません。コンパウンド(ゴム素材)本来の性質が失われれば、摩耗も進みやすくなります。

タイヤにとってベストな保管環境は、以下を満たした場所です。

  • 直射日光が当たらない
  • 雨風が当たらない
  • 風通しが良い

屋外の物置や倉庫、ガレージの日陰部分などでの保管をおすすめします。物置がない場合は、紫外線や風雨を遮断できるタイヤカバーをかけて、保管してください。

 

空気圧や状態を定期的に点検する

タイヤを長持ちさせるコツ3つ目は、定期的な点検を怠らないことです。点検したいポイントは、次の2つ。

  • タイヤの空気圧
  • タイヤの状態

タイヤの適正空気圧は、車体の運転席ドアを開けた内側に記されています。ガソリンスタンドには空気圧測定機が備えられており、初めての方も簡単に点検できるようになっています。

使い方に不安があれば、スタッフに問い合わせてください。

また、走行中に釘や鋲を踏んでいたり、異物が挟まっていたりすると、タイヤの傷み・パンクを引き起こすおそれがあります。タイヤが正常な状態を保てているか、目視でチェックしましょう。

数か月から半年に1回程度、タイヤ専門店や整備工場で、プロの点検を受けることもおすすめです。

まとめ

タイヤのスリップサインは、タイヤの溝が残り1.6mmになったことを伝えるマークです。スリップサインが出たタイヤは寿命を迎えており、速やかに新品と交換しなければなりません。

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監修者:こげパン
現在、一級自動車整備士(整備士歴10年)として整備工場に勤務。専門学校卒業後、輸入車ディーラーに整備士として勤務、6年間で3社を経験。その他、「国家二級ガソリン自動車整備士」「国家二級ディーゼル自動車整備士」「アーク溶接」「低圧電気取扱者」の資格を保有。