「スタッドレスタイヤの履き潰しはダメ」って本当?3つの理由とその根拠

スタッドレスタイヤは、寿命を迎えても「まだまだ使えそう」と感じさせる見た目をしています。
実際、寿命を迎えたスタッドレスタイヤを夏も履き続け、履き潰そうとする人も大勢います。

しかしプロは、「スタッドレスタイヤの履き潰しは危険」といいます。

なぜ、スタッドレスタイヤの履き潰しはいけないのでしょうか。

 

 

今回は「もったいない」「まだ履ける」との考えがひっくり返るかもしれない、スタッドレスタイヤを履き潰す危険性をまとめました。

実際に起きた事故や検証実験も紹介します。安全に、安心して車に乗るヒントとして、ご活用ください。

▼この記事を最後まで読んでわかること
・スタッドレスタイヤの履き潰しが危険である理由
・履き潰しによる事故の事例
・タイヤをお得に購入する方法
・タイヤ流通センターなら激安でタイヤ交換ができる

スタッドレスタイヤの履き潰しとは

スタッドレスタイヤの履き潰しとは、寿命がきて冬用としては使えなくなったタイヤを、そのまま夏も履き続けることです。

実はスタッドレスタイヤは、冬用としての寿命がきても夏タイヤとして履き続けられます(詳しくは後述)。

夏タイヤへ交換せずに乗り続けたい事情があるときに、スタッドレスタイヤを履き潰す選択をする人も相当数います。

スタッドレスタイヤを履き潰したくなる事情

春になってもスタッドレスタイヤから夏タイヤに交換せず、スタッドレスタイヤを履き潰したいと考えるのは、どんな時でしょうか。

よくあるのは「交換する夏タイヤも寿命を迎えている」場合です。

冬前に夏タイヤからスタッドレスタイヤに交換した際、自動車整備士から「夏タイヤが寿命なので、次の交換は新しいタイヤの用意を」と言われたと想像してください。

このままでは、夏タイヤを購入しなければなりません。

しかし、いま履いているスタッドレスタイヤは、次の冬には使えないとしても、夏用としてまだまだ履けます。

「このまま履き潰せば、今年は夏タイヤを購入せずに済む」とは思いませんか?

タイヤ価格は値上がりを続けており、予算の準備が大変だという人も多いでしょう。

夏タイヤの購入を1年節約できるというのが、スタッドレスタイヤの履き潰しでよくある事情です。

<体験談>
筆者(雪国のスバルSUV乗り)も、スタッドレスタイヤを履き潰した経験があります。
しかも、タイヤ交換を依頼した整備工場の提案によって、です。

  • 夏タイヤもスタッドレスタイヤも寿命を迎えている
  • スタッドレスタイヤを履き潰せば、タイヤの購入を半年ずつ先送りできる

それが履き潰しを勧められた理由でした。

勧めにしたがってスタッドレスタイヤの履き潰しを経験しましたが、いまは「二度とやらない」と思っています。そう感じた理由は後述しますので、先をご覧ください。

スタッドレスタイヤの履き潰しは、法的にはOK

冬用タイヤとしては寿命を迎えたスタッドレスタイヤの履き潰しは、そもそもやって良いのでしょうか。

実は法的には何ら問題がありません。詳しく解説します。

スタッドレスタイヤの寿命

まず、スタッドレスタイヤの寿命(冬用として履けなくなる)はどのような状態か、見てみましょう。

スタッドレスタイヤは「プラットホーム」と呼ばれる目印で、冬用タイヤとしての使用限度が示されます。

プラットホームはスタッドレスタイヤ1本に4か所程度設けられている、小さな突起です。タイヤの摩耗とともに露出するように配置されています。新品から50%摩耗すると、プラットホームが完全に露出します。

(※ 画像:タイヤのおはなし(乗用車用タイヤ編) | 一般社団法人 日本自動車タイヤ協会 JATMA)

プラットホームが露出した状態が、スタッドレスタイヤの寿命です。この状態になると、スタッドレスタイヤで公道を走ってはいけません。

寿命がきたスタッドレスタイヤを夏場に履いても構わない

では冬用として寿命に達したスタッドレスタイヤでも、夏に履き潰せるのはなぜでしょうか。

実はタイヤには、もう1つの寿命を示すサインがあります。

「スリップサイン」と呼ばれる、プラットホームより溝の深い部分にある印です。

スリップサインもタイヤの摩耗に伴って露出します。スリップサインがあらわれるのは、溝の残りが1.6mmになった時点です。

スリップサインの露出は、タイヤとしての寿命を意味します。このタイヤで公道を走行すると道路交通法違反となります。

反対にいうと「プラットホームが露出したタイヤでも、スリップサインが露出するまではタイヤとして使える」ということです。

これが、冬用としては寿命を迎えたタイヤを、夏も履き続けられる理由です。

<補足情報>
履き潰している最中のスタッドレスタイヤも、スリップサインが出ていなければ車検を通過できます。道路交通法に違反してはいないためです。

それでもスタッドレスタイヤの履き潰しが推奨されない理由

「夏タイヤとしては使える」「車検も通る」といった理由で、スタッドレスタイヤを履き潰している車は、実際数多く見かけます。

一方で、どのタイヤメーカーも、カー用店やタイヤ専門店も「スタッドレスタイヤの履き潰しはダメ」と念押しします。

なぜ“まだ履ける”スタッドレスタイヤの履き潰しは、推奨されないのでしょうか。

夏タイヤとスタッドレスタイヤはつくりが異なる

スタッドレスタイヤは、冬の積雪路や凍結路を走るためのつくりをしています。

夏タイヤとスタッドレスタイヤの違いは、接地面に刻まれた溝の形状(トレッドパターン)を見ると分かります。

夏タイヤのつくり

夏タイヤは比較的大きな溝が、直線的に入っています。

接地面の中央付近に、深く大きな溝があるのも、夏タイヤの特徴です。この溝により、接地面の水分がスムーズに後方に排水され、スリップを防ぎます。

スタッドレスタイヤのつくり

スタッドレスタイヤのトレッドパターンは、夏タイヤに比べて細かな溝がたくさん刻まれています。

大きな溝で囲まれたブロックの中に、ギザギザの形状をした小さな溝が無数にみられます。この溝は、雪や氷に対するグリップ力を上げるために刻まれています。

細かな溝が凹凸の多い冬の路面でしなやかにグリップし、スリップを防ぐというわけです。溝の数だけタイヤ表面の角が多くなり、氷をひっかく力も増します。

スタッドレスタイヤのトレッドパターンは、夏に不向き

さてこの細かな溝が、スタッドレスタイヤを夏に履き潰すときにはデメリットになります。

細かな溝が路面に密着するため、走行性能が低下するのです。路面を必要以上にグリップするため、燃費が低下するともいわれます。

スタッドレスタイヤは夏タイヤよりゴムが柔らかい

タイヤの原材料であるゴムは、気温が低下すると硬くなります。硬くなったゴムはしなやかさを失い、路面をグリップしにくくなります。

そこでスタッドレスタイヤは、気温が低下しても硬くなりにくいゴムで製造します。冬の路面に適したゴムを使うことで、凹凸の多い冬の道路でも安定した走行を可能にしているのです。

さて、このスタッドレスタイヤ特有のゴムの柔らかさもまた、履き潰しのデメリットになります。

高温の路面ではゴムが柔らかくなりすぎ、次のような不具合が発生しかねません。

  • 接地面が増え、タイヤの摩耗が激しくなる
  • 路面を適切にグリップできなくなる
  • キビキビしたハンドル操作が難しくなる

もちろん、冬も良く晴れて気温が上がる日もあります。

しかし冬の気温は、かなり上がった日でも春の気温にすら及ばないでしょう。自ずと路面の温度も低くなり、スタッドレスタイヤの柔らかさに大きな影響は与えません。

<体験談>
筆者がスタッドレスタイヤを履き潰した夏、いつもの夏タイヤと比べて走りが「ねっとり」していると感じました。タイヤが路面にねばりつくような、そのせいで車体が重くなったような気がしたものです。とくに高速道路を走っているときに、ねっとり感を強く感じました。高速道路はタイヤと路面の摩擦熱が大きく、一般道以上に接地面の温度が高くなります。
おそらくタイヤのゴムは、かなり柔らかくなっていたと思います。この走行感覚がどうしても苦手で、筆者は「もうスタッドレスタイヤの履き潰しはしない」と心に決めました。

スタッドレスタイヤはウェット路面に弱い

スタッドレスタイヤはウェット路面に弱い、という事実もあります。

スタッドレスタイヤは雪や氷をひっかき、グリップする構造をしています。また雪や氷とタイヤの間にあるわずかな水分を、細かな溝を通じて排出します。

一方、スタッドレスタイヤは、夏の雨のような多量の水分の排出には向いていません。細かな溝がかえって水分を溜め込んでしまい、ハイドロプレーニング現象を引き起こすおそれもあります。

<補足情報>ハイドロプレーニング現象とは
タイヤと路面の間に水の膜ができて車体が浮き上がった状態になり、ハンドル操作が利かなくなる状態。雨の高速走行で起きやすい。

スタッドレスタイヤの履き潰しでも、気をつけて走行している分にはトラブルに遭う可能性は少ないでしょう。

ただ運転は、いつ何があるかわからないのが怖いところです。

雨の日に「急に子どもが飛び出してきた」「障害物を避けようと急ハンドルを切った」、そんなよくある局面で最悪の展開にならないとは言い切れません。

スタッドレスタイヤの履き潰しは避け、春になったら夏タイヤへの交換を習慣化しましょう。

スタッドレスタイヤの履き潰しが危険といえる事例

スタッドレスタイヤの履き潰しが危険といえる事例を、2つ紹介します。

車に乗る以上、同じ危険に遭う可能性があると考え、スタッドレスタイヤの履き潰しを再考するきっかけにしてください。

北海道広尾郡大樹町で起きた死亡事故

2023年7月23日、北海道広尾郡大樹町で軽乗用車と乗用車が衝突し、4人が亡くなった事故が起きました。

大樹町4人死亡事故「蛇行してきて避けられなかった」軽乗用車は滑りやすい”スタッドレスタイヤ”を装着…関係者は悲嘆 (23/07/24 20:30)

この事故では、夏にもかかわらず軽乗用車がスタッドレスタイヤを履いていたことがわかっています。おそらく履き潰していたのではないでしょうか。

軽自動車はセンターラインや路肩にはみ出しながら走行していたそうです。乗用車のドライバーは「軽自動車が蛇行していて、避けられなかった」と話していたとのこと。

軽自動車の蛇行運転や事故への関連性は明確ではありません。しかし、NHKなどの報道各社は、夏のスタッドレスタイヤ履き潰しの怖さを喚起しています。

JAFによる摩耗タイヤの検証実験

2015年、JAF(一般社団法人日本自動車連盟)は、タイヤの状態や路面状況と制動距離の関連性を検証しました。

結果は以下のとおりです。

(※ 引用:摩耗タイヤの検証(JAFユーザーテスト)|JAF)

摩耗条件が同じ50%の、夏用タイヤ(5分山)とスタッドレスタイヤ(プラットホーム出現)を比較しましょう。

ドライ路面・ウェット路面ともに、スタッドレスタイヤのほうが制動距離が長いことがわかります。

さらに注目したいのは、以下のデータです。

ドライ路面での制動距離の差は時速60kmで2.5m、時速100kmで7.0mでした。
ウェット路面になると、制動距離の差は時速60kmで3.6m、時速100kmでは21.4mにも達します。

21.4mは標準の乗用車で約4台分の長さです。

「あっ!」と思ってブレーキを踏んでから、21m先まで行かないと停止できないということです。

もし子どもが飛び出して来たら…、と思うとぞっとする結果ではないでしょうか。

タイヤをお得に買う方法

スタッドレスタイヤを履き潰す理由で多くを占めるのは「夏タイヤ購入を先延ばしし、出費を抑えたい」というものではないでしょうか。

しかし、スタッドレスタイヤの履き潰しには危険がともないます。春には、夏タイヤへの交換を強くおすすめします。

タイヤ費用の悩みを少しでも軽減できるよう、タイヤをお得に買う方法を3つ紹介します。それぞれのメリット・デメリットも踏まえ、最善の方法を選んでください。

ネット通販

ネット通販は、実店舗より低価格でタイヤを購入できるケースが多いようです。

編集部の調査でも、実店舗より1本数千円~数万円単位で安くなるタイヤも見つかりました。

「タイヤを少しでも安く買いたい」人は、チェックしてみる価値があります。

ただしネット通販でのタイヤ購入は、実物を見られないのが難点です。また買ったタイヤを交換してくれる整備工場も探さなければなりません。

持ち込みタイヤへの交換は受け付けないとする整備工場もあります。ネット通販でタイヤを購入する前に、整備工場を見つけておくと安心です。

中古タイヤ

リユース意識の高まりにつれて、中古タイヤ市場も活況となっています。

中古タイヤとは走行歴はあるものの、まだ十分に使えるタイヤです。「購入した新車の標準タイヤを、こだわりのタイヤに交換した」といった理由で、まだまだ使えるタイヤが市場に流れてきたものです。

中古タイヤは、専門の整備士がチェックしてから販売される、中古タイヤ専門店での購入がおすすめです。

日本最大級の中古タイヤ取扱店「アップガレージ」など、信頼できるショップも多数あります。新品にこだわらないならば、ぜひチェックしてみてください。

タイヤ専門店

タイヤ専門店は、専門店ならではの流通ルートを持っています。

流通ルートは国内外を網羅しており、あらゆるメーカーのタイヤが揃っている点が魅力です。
コスパの良さで人気のアジアンタイヤをはじめ、性能にこだわりのある欧米メーカー、高品質な国内メーカーまで揃います。

またスケールメリットを生かしてリーズナブルに仕入れており、販売価格も連動してお得な傾向があります。

整備工場を併設しているショップも多めです。タイヤを買ったあとに、取り付け場所に困ることもありません。

「多くのタイヤから、できるだけ安いものを選びたい」「さまざまなメーカーのタイヤを試してみたい」人には、タイヤ専門店がおすすめです。

スタッドレスタイヤも夏タイヤも、タイヤ流通センターにお任せ

タイヤ流通センターは全国に150以上の店舗網を展開する、国内有数規模のタイヤ専門店です。

タイヤメーカーやタイプによるわかりにくい価格設定を撤廃し、明瞭な定額制でタイヤをご用意します。

定額プランは全部で3つ、お好みのものをお選びください。

  • ゴールドプラン:とにかくお得!アジアンタイヤを中心に。
  • プラチナプラン:コスパ最強!国内外の良質メーカー。
  • ダイヤモンドプラン:品質重視!国内メーカーが中心。

また連絡先やメールアドレスの登録なしで、その場ですぐにタイヤ料金の見積もりが出るのも、タイヤ流通センターならではのサービスです。
必要な情報は車種とタイヤサイズだけ、すぐに見積もりをご提示します。

一度試しに、「かんたん30秒見積り」で3プランのタイヤ価格を見てみてはいかがでしょうか。

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まとめ

スタッドレスタイヤは冬用タイヤとして寿命を迎えても、スリップサインが出るまでは夏用タイヤとして使えます。

そのため「もったいない」「まだ使える」という心理がはたらき、履き潰しを選択する人も多いようです。

しかし夏場のスタッドレスタイヤ走行は、多くの危険をはらみます。最悪の事故にもつながりかねず、決して推奨できる方法ではありません。

スタッドレスタイヤは冬のタイヤとして、春には夏タイヤに交換するようにしましょう。

タイヤをお得に買いたいときは、タイヤ専門店であるタイヤ流通センターにご相談ください。国内外のあらゆるメーカーのタイヤから、愛車に最適な1本をリーズナブルにご案内します。

 

監修者:こげパン
現在、一級自動車整備士(整備士歴10年)として整備工場に勤務。専門学校卒業後、輸入車ディーラーに整備士として勤務、6年間で3社を経験。その他、「国家二級ガソリン自動車整備士」「国家二級ディーゼル自動車整備士」「アーク溶接」「低圧電気取扱者」の資格を保有。

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